地殻ダイナミクス

平成26年〜30年度
文部科学省 科学研究費補助金 新学術研究

Crustal Dynamics Unified understanding of intra-island deformation after the great Tohoku-oki earthquake.

【本領域の目的】
東北地方太平洋沖地震(以下、東北沖地震と略記)は世界の科学者の注目を集め、多くの論文が出版されているが、未だ多くの謎に包まれている。その原因は、 我々が実は、島弧地殻の基本的な特性や状態を把握していなかったためであると考えられる。まるで、気圧や湿度の値も知らずに天気を予報しようとするような ものであった。本領域では、これまで不明だった応力の絶対値や日本列島の変形場に関する統一的な描像、それらに関連する断層の摩擦係数や地殻・マントルの 粘性係数等の島弧内陸の媒質特性を明らかにすることにより、東北沖地震後に生起している諸現象を統一的に理解する。

【本領域の内容】
本領域の基本的な研究戦略は、
(A) 応力・歪・歪速度を観測データに基づき推定、(B) 流体を含む媒質特性とその時の空間変化を観察・観測・実験等により推定、

(C) これらの知見に基づき数値モデルを構築して観測データを再現し、モデルの検証を行う、というものである。このため総括班の下に6つの計画研究班をおいて各項目の研究を進める:

A01 内陸地殻の強度と応力の解明
A02 異なる時空間スケールにおける日本列島の変形場の解明
B01 観察・観測による断層帯の発達過程とミクロからマクロまでの地殻構造の解明
B02 岩石変形実験による地殻の力学物性の解明:流体の影響
B03 地殻流体の実態と島弧ダイナミクスに対する役割の解明
C01 島弧地殻における変形・断層すべり過程のモデル構築

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各研究班は共同して、次の融合研究をすすめる:

(1) 応力場の理解
 地震学的な手法により応力の絶対値、および間隙水圧と摩擦係数の関係を推定、観察と観測により断層帯の構造や変形特性を推定、岩石変形実験より断層の摩 擦や断層岩の変形特性を推定、地殻流体の観測等を参照して媒質特性を推定、これらの知見に基づく断層帯の数値モデルを構築して、観測された応力場を再現する。

(2) 歪速度場の理解
 測地学的・地質・地形学的な手法により短期・長期的な歪・歪速度場を推定、天然の変形岩の観察および岩石変形実験により下部地殻・上部マントルの変形特 性を推定、トモグラフィーデータ等から岩質や地殻流体の分布を推定、数値シミュレーション等により地殻流体の分布と温度構造を推定、(1)により推定され た絶対応力場を参照、温度や水の効果および過渡的応答を考慮した変形シミュレーションにより、観測された歪・歪速度場を再現する。歪=弾性歪+非弾性歪で あるが、地震発生域では非弾性変形が無視されることが多かった。本領域では両者の分離を試みる。

東北沖地震による大きな変動を活用して、これまで解明が難しかった難問に挑む。

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