1. Kawasaki, I., Y. Suzuki and R. Sato, 1973,
Seismic waves due to a shear fault in a semi-infinite medium. Part I: Point
source,
Journal of Physics of
the Earth, 21, 251-284.
2. Kawasaki, I. and T. Tanimoto, 1981,
Radiation patterns of body waves due to the seismic dislocation occurring
in an anisotropic source medium,
Bulletin of Seismological Society of America, 71, 37-50.
3. Kawasaki, I.,
1982,
A method for the near-source anisotropy by the pair-event inversion Rayleigh-wave
radiation patterns,
Geophysical Journal of Royal Astronomical Society, 71,
395-424.
4. Kawasaki, I., Y. Kawahara, I. Takata and N. Kosugi, 1985,
Mode of seismic moment release at transform faults,
Tectonophysics, 118,
313-327.
5. Kawasaki, I.,
1986,
Azimuthally anisotropic model of the oceanic upper mantle,
Physics of the Earth
and Planetary Interiors, 43,
1-21.
6. Kawasaki, I.,
1989,
Seismic anisotropy in
the Earth, in The Encyclopedia of Solid Earth Geophysics,
edited by D. E. James, Van Nostrand Reinhold, Penn., 994-1005.
7. Kawasaki, I. and K. Koketsu, 1990,
Rayleigh-Love wave coupling in an azimuthally anisotropic medium,
Journal of Physics
of the Earth, 38, 361-390.
8. Kawasaki, I., Y. Asai, Y. Tamura, T. Sagiya,
N. Mikami, Y. Okada, M. Sakata and M. Kasahara,
1995,
The 1992 Sanriku-Oki, Japan, Ultra-slow earthquake,
Journal of Physics
of the Earth, 43, 105-116.
9. Kawasaki, I., Y. Asai and Y. Tamura, 2001,
Space-time distribution
of interplate moment release including slow earthquakes and the seismo-geodetic coupling in the Sanriku-oki region along the Japan
trench,
Tectonophysics,
330, 267-283.
10. Kawasaki, I., 2004,
Silent earthquakes occurring in a stable-unstable transition zone and implications for earthquake prediction,
Earth
Planet and Space, 56,
813-821.
番外:川崎一朗・島村英紀・浅田敏、1993, サイレント・アースクエイク、東京大学出版会.
1. Kawasaki, I., Y. Suzuki and R. Sato, 1973,
Seismic waves due to a shear fault in a semi-infinite medium. Part I: Point
source,
「無限に拡がる均質弾性媒質中」に生じたディスロケーション点震源から放出された弾性波の数学的解析解は、Maruyama (1963)
と Burridge and Knopoff (1964)によって求められた。Haskell (1969)
は、初めて、均質無限弾性体中の(点震源ではなく)有限矩形の断層面のディスロケーションによる弾性波の波形を計算し、私が大学院生になった1970年当時、大きな話題になっていた。
私の論文では、「無限に拡がる均質弾性媒質中」から一歩前進させ、Cagniard (1962)
の方法により、水平な地表がある半無限媒質中に生じたディスロケーション震源による弾性波の解析的厳密解を初めて求めた。カルタンの複素関数論が副読本だった。初めて大型計算機センターのラインプリンターから図1の弾性波波形が出てきたときには本当にうれしかった!
佐藤良輔先生(東大名誉教授)の指導のもとで行った最初の研究で、私の修士論文になった。なんと言っても私の出発点である。佐藤先生は、2003年5月、亡くなられた。
図1

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2. Kawasaki, I. and T. Tanimoto, 1981,
Radiation patterns of body waves due to the seismic dislocation occurring
in an anisotropic source medium,
Bulletin of Seismological Society of America, 71, 37-50.
異方的な媒質の中に生じたディスロケーションに等価な力源(ダブルカップルから外れる項が出現する)を求め、Kosevich and Natsik (1964)
の異方的媒質での遠方場近似のグリーン関数を用い、P波とS波のラディエイション(放射)パターンの近似解を求めた。それは、図2の様に、微妙に4象限型では無くなる。
図2

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3. Kawasaki, I.,
1982,
A method for the
near-source anisotropy by the pair-event inversion of Rayleigh-wave radiation
patterns,
Geophysical Journal of Royal Astronomical Society, 71,
395-424.
大西洋中央海嶺のほぼ同じ場所で発生した、メカニズムの異なる(正断層型と垂直横ずれ型)2つの地震の表面波のスペクトル比のインバージョンから、中央海嶺直下の海洋最上部マントルの異方性を求める試みを行った。
震源域がオフィオライトに見いだされるオリビン(かんらん石)と同じ異方性を持つと仮定する(ずいぶん荒っぽい仮定だが)と、図3の様に「オリビンのa軸が拡大方向を向いている」結果になった。とはいえ、残念ながら、当時の地震記録では、統計的有意性は不十分であった。
図3

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4. Kawasaki, I., Y. Kawahara, I. Takata and N. Kosugi, 1985,
Mode of seismic moment
release at transform faults,
Tectonophysics, 118,
313-327.
地球上の中央海嶺のトランスフォーム断層で発生した横ずれ型地震のモーメントテンソル解を徹底的に求めた。それをトランスフォーム断層の長さでノーマライズすると、図4の様に、拡大速度の大きなエルタニン・トランスフォーム断層(太平洋ー南極海嶺)では、長さと拡大速度に見合うだけの地震がほとんど起こっておらず(最上部マントルが相対的に熱くて柔らかい)、拡大速度が小さなギブス・トランスフォーム断層(北大西洋)では長さと拡大速度に見合う地震が起こっている(最上部マントルが冷たくて固い)ことが明瞭になった。
図4

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5. Kawasaki, I.,
1986,
Azimuthally anisotropic model of the oceanic upper mantle,
Physics of the Earth
and Planetary Interiors, 43,
1-21.
昔の中央海嶺マントルの化石であるオフィオライトの超塩基性岩では、オリビンのa軸とパイロキシンのc軸が、当時の中央海嶺の中軸谷に直行するように並んでいる。同じ異方性の枠組みを導入して太平洋の表面波の分散曲線のインバージョンを行うと、太平洋での異方性の観測を基本的に説明可能であることを示した。
単純化していると、「昔のマントルの化石と現在のマントルが同じ結晶構造をしている」ということである。このことに思い至ったとき、興奮して研究室の中を歩き回りまわってしまった。
2つ目のポイントとして、太平洋プレートなど、海洋プレートの平均的厚さは、通常、70km から 100km
と考えられている。上記のインバージョンを行うと、海洋プレートの厚さが 45km から 50km になることが分かった。この論文に限らず、異方性を導入すると、共通して、太平洋プレートが有意に薄くなる傾向がある。
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6. Kawasaki, I., 1989,
Seismic anisotropy in
the Earth, in The Encyclopedia of Solid Earth Geophysics,
edited by D. E. James, Van Nostrand Reinhold, Penn., 994-1005.
海底地震計観測による、地磁気縞模様に直交する方向に早い8%程度のPn速度方位異方性、同じく2~3%程度のレイリー波速度方位異方性、ほとんど0%程度のラブ波速度方位異方性のマッピングなどのレビューを行った。自分の研究の歴史でもあり、当時としては最前のレビューだったと思っている。
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7. Kawasaki, I. and K. Koketsu, 1990,
Rayleigh-Love wave
coupling in an azimuthally anisotropic medium,
Journal of Physics
of the Earth, 38, 361-390.
Pekeris先生達が1950年代に最初の道筋をつけ、1960年代に、日本の竹内均先生(東大名誉教授、2003年逝去)や斉藤正徳先生(東工大名誉教授)などによって発展されてきた、表面波の固有値と固有関数を積分法で計算する方法(y-method と呼ばれている)を、一般的に異方的な媒質に拡張した。その結果、レイリー波とラブ波のカップリングなどが厳密に理解できるようになった。図7は、方位異方的な海洋上部マントルモデルにおける表面波の分散曲線の1例である。周期30秒前後で、2つの分散曲線が交差している。これが、 Rayleigh wave-Love wave coupling である。このカップリングは、位相速度が一致した周期帯で起こる。この図がやっと書けたときにも大いに興奮した!
大いに数学的解決の喜びを感じた論文だった。本質的な部分を「紙と鉛筆による研究」としては行き着くところまで行った研究だったと思っている。私は大いに愛着を持っているが、数学的に多少難しいせいか、誰も私のプログラムを使ってくれないし、引用もしてくれない。
図7

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8. Kawasaki, I., Y. Asai, Y. Tamura, T. Sagiya,
N. Mikami, Y. Okada, M. Sakata and M. Kasahara,
1995,
The 1992 Sanriku-Oki, Japan, Ultra-slow earthquake,
Journal of Physics
of the Earth, 43, 105-116.
1980年代の終わり頃、「沈み込み帯ではスロー地震やサイレント地震がいっぱい起こっているに違いない。三陸沖の日本海溝のサイスミック・カップリング(地震結合度)は30%程度だが、残りのギャップはスロー地震やサイレント地震が埋めているに違いない。それを証明したいと」という夢(妄想?)を持って、地殻変動連続観測記録を徹底的に再解析する研究を始めた。
1992年三陸沖地震は、三陸海岸100km沖のMJMA6.9 のそれほど大きくない地震で、被害もほとんど無く、ほとんど注目を浴びなかった。ところが、地殻変動連続観測記録を注意深く解析してみると(図8)、MJMA7.5に匹敵するプレート間モーメントを開放した事件であった。大いに発見の喜びを感じた。
図8

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9. Kawasaki, I., Y. Asai and Y. Tamura, 2001,
Space-time distribution
of interplate moment release including slow earthquakes and the seismo-geodetic coupling in the Sanriku-oki region along the Japan
trench,
Tectonophysics,
330, 267-283.
図9は、プレート間モーメント解放の時空間分布図であす。(B) は地震モーメントのみの場合、(c)は非地震性のすべりも含めた場合である。スロー地震地震としてのすべりも含めると、北緯39 度から40.7 度に限ると、プレート間カップリングが60ー80%と大きく見えることが分かる。この図が書けたときもすごく興奮した。
図9

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10. Kawasaki, I., 2004,
Silent earthquakes occurring in a stable-unstable transition zone and implications
for earthquake prediction,
Earth
Planet and Space, 56,
813-821.
フィリピン海プレート境界面で起こったサイレント地震(図10)のレビュー。現在までに発見された限りでは、
(1) 巨大大地震の主要アスペイティは30km以浅の地震発生帯に分布し、すべり量は3m程度。一方、サイレント地震は深さ30km前後の遷移帯に発生し、すべり量は20cm以下。
(2) 地震周期帯とGPS周期帯の間に、モーメント速度にして4桁のギャップがある。
(3) 南関東のサイレント地震と南海トラフのサイレント地震の間には、モーメント速度にして1桁以上のギャップがある。
などが分かっている。1990年代以降の日本のサイレント地震の研究のまとめとも言える。
図10

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番外:川崎一朗・島村英紀・浅田敏、1993, サイレント・アースクエイク、東京大学出版会.

恩師である浅田敏先生(東大名誉教授)と、尊敬する先輩である島村英紀さん共に、「日本人のオリジナリティに焦点を当てながら、自分の言いたいことを書き残しておくような本を作ろうではないか」というとこで書かせてもらいました。浅田先生は、2003年1月に亡くなられました。
浅田先生と島村さんは、言うまでもなく、日本が世界に誇る海底地震計を育ててきた方々です。この本では、サイレント・アースクエイクだけでなく、浅田先生が手作りの高感度地震計で、1948年福井地震の時、世界で初めて微小な余震をいっぱい観測したときの感動なども書かれています。
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