地震の大きさを決めるものは何か?

<背景・目的>
 地震には,2004年スマトラ地震のように断層の長さが千kmにも達する巨大なものから,数m程度の小さなものまで存在することが知られています.驚くべきことに,その大きさの範囲が,断層の長さにして6桁にも及ぶにも関わらず,地震は互いに相似であることが定説となっています.相似とは,例えば,断層の長さと断層面上のすべり量の比が地震の大きさによらず一定であるということです.

 相似であるなら,大きな地震と小さな地震は,単に大きさが違うだけです.もし本当にそうだとしたら,地震の大きさはどのように決まるのでしょうか?

  一方の極端な考えは,大きな地震は小さな地震がたまたま大きくなったものであるというものです.他方の極端な考えは,大きな地震は大きな破壊の「種」を持っており,小さな地震とは最初から異なるというものです.破壊の「種」とは,地震波を放射する急激な破壊に至るまでに,ゆっくりとすべる初期破壊(破壊核と呼ばれることが多いです)のことを指しています.

 大きな地震は小さな地震がたまたま大きくなったものならば,波形の始まりの部分は,大きな地震も小さな地震も似たようなものとなるでしょう.一方,大きな地震が大きな破壊核を持っているならば,始まりの波形は,大きな地震と小さな地震で異なっている可能性があります.

 そこで,地震波形の始まりの部分を精細に調べて,大きな地震と小さな地震の違いを明らかにしようという研究を行っているわけです.


<最近の成果>
 1984年長野県西部地震の震源域では,地震後25年近く経過しても,微小地震が多数起こっています.震源は非常に浅く,また岩盤は硬く均質なため,他の地域で得ることが難しい質の高い波形データを得ることが出来ます.最も近いものでは,震源距離約400mという地震を記録したことがあります.

 1995年から,10kHzサンプリングという通常の100倍程度の分解能で波形を記録できる地震観測網が稼働しています.観測点数は最大で60点近くとなっています.

 この高分解能の波形を活用して,地震の始まりの始まりの波形を精細に調べています.その結果,大きな地震の波形は振幅が時間とともに急激に大きくなること,一方,その始まり部分,千分の1秒程度の間は,より小さな地震とあまり変わらないことが分かってきました.これらのことは,大きな地震が,その発生直後から小さな地震と異なっていることを示唆しています.大きな地震の小さな地震は最初から異なっている可能性もあり,今後,さらに詳しく調べたいと思います.


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