満点システムを用いた地震観測研究計画の共通の目的

 南海トラフの巨大地震の前後に西南日本の内陸において地震活動が活発化することが知られています。昭和の東南海・南海道地震の前後にも、1927年北丹後地震、1943年鳥取地震や1948年福井地震など、日本海沿岸で大地震が発生しています。しかし、今後、西南日本のどこで、内陸大地震が発生する可能性が高いのかはよく分かっていません。

 地震は、断層をずらせようとする力が、断層の強度を超えると発生します。そのため、大地震の発生を予測するためには、どこに断層があるのか、その断層の強度はどれくらいか、その断層にどのような力がはたらいているかということを知ることが重要となります。しかしながら、断層の強度や断層に働く力の大きさのことはほとんど分かっていません。そのため、個々の断層の活動の歴史から、大地震が差し迫っているかどうかが評価されています。

 満点計画の主な目的の一つは、断層に働く力や断層の強度の大きさを明らかにすることです。これらが解明されると、ある断層において大地震が差し迫っているかどうかを、より直接的に評価することが可能となります。しかしながら、これはかなり困難な課題です。地殻深部でどのような力が働いているかを推定するためには、地震の波形を多数の点で観測する必要があります。現在の定常的な地震観測網では20〜30kmおきに地震計が設置されていますが、これでは全く足りません。満点計画では、1kmおき位に地震計を配置することを目指しています。

 満点計画のもう一つの主な目的は、地下の構造を詳細に明らかにすることです。近年、内陸地震の発生には、断層直下の「やわらかい」領域が重要な役割を果たしていることが分かってきました。1kmおきの地震観測網により、「やわらかい」領域の位置や拡がりを推定することが可能となります。これは、内陸大地震が発生する場所の推定に役立つと期待されます。

 地震計を多数配置することにより、地下の様子を、これまでとは比べものにならないくらいに詳細に推定したいと思っています。


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