内陸地震の発生過程の研究

<背景・目的>
 内陸直下型大地震は,最も危険な災害の一つです.その発生を予測することにより被害を著しく軽減できると期待されますが,現在のところ,数十年の時間スケールの長期的な発生予測(長期予知),および,数日スケールの短期的な発生予測(短期予知)の両方とも,大きな問題を抱えています.
 現在,長期的な発生予測は,活断層の活動履歴に基づく統計的な手法で行われています.これは,現時点では唯一の定量的な手法なのですが,内陸大地震の発生間隔が長いため,その予測には数百年以上の幅がある場合が多いです.短期予知は,前兆現象の現れ方の多様性などのために,極めて困難であると考えられています.

 内陸大地震の発生予測が遅れている大きな理由は,その発生の仕組みが未だに解き明かされていないためだと考えられます.そこで,内陸地震の発生の仕組みを明らかにし,発生過程の理解に基づいた発生予測手法を開発することを目指します.


<最近の成果>
 内陸地震は身近な現象にもかかわらず,数年前までは,その基本的な発生の仕組みはほとんど分かっていませんでした.沈み込むプレートに押されて,日本列島の内陸に歪みがたまり内陸地震が発生すると思われていました.しかし,この考えでは,

(1) プレート境界の大地震の発生間隔を超えて,内陸大地震の断層の歪みが増加できるのか?
(2)プレート境界に近いほど歪みは大きいはずなのに,プレート境界から遠く離れた地域で内陸大地震が多いのはなぜか?

ということは説明不可能でした.加えて,

(3) 内陸大地震の再来間隔は,どうして数百年から数万年以上と大きくばらつくのか?
(4) 断層の端はどうなっているか? 何が内陸大地震の大きさを決めるのか?

ということもよく分かっていませんでした.

 最近,我々は,内陸大地震の断層の下側の下部地殻にあると推定される,断層の深部延長の働きに着目した内陸地震の発生過程の新説「脆性-塑性相互作用モデル」を提唱しました.これにより,これまで説明が難しかった色々な観測事実を説明可能となりました.今後,この説の検証を進めて,内陸地震の発生過程を明らかにし,新たな発生予測手法を開発したいと考えています.


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