「ボクの不思議,私の疑問」コーナー:子供達の疑問集より
〈橋本により,編集分類〉
・なぜ,地震が起きるのか?
地球は生まれた時に大きな熱が発生して,岩石を溶かしました.10億年くらいたって,表面が冷え固まりましたが,地球の中にはまだまだすごい熱が貯まっていて,これを宇宙へ向かって,出しつづけています.その過程で,地球の中でいろんな力が働いて,その力に岩石が耐えられなくなった時,壊れる現象が地震です.
・地球が誕生した時から,地震はあったのか?
誕生から10億年くらいは,熱によって岩石が溶けていたと考えられています.溶けた岩石は,バキッといった壊れ方をしないで,ゼリーのようにどろ?と流れますから,この間,地震はなかったのではないでしょうか?
・日本では,どうして大きな地震がよく起きるのか?
日本の周りにはプレートが寄り集まっていて,そのために大きな力が常にかかっています.プレートはその本体に比べると,となりのプレートとの境界の方が圧倒的に弱いので,境界で頻繁に地震が起きます.
・次に大地震が起きる(可能性のある)国は?
アメリカ,日本,インドネシア,中国,メキシコ・チリなど中南米の各国,ギリシア,イタリアなどが地震のよく起こる国です.これらの国に出かける時は,地震のことを忘れないようにしましょう.
・南極あるいは北極でも地震が起きるのか?
南極と北極は,地震に関しては全く違います.北極の真下は海で,その海は大西洋の延長と言ってもよく,大西洋中央海嶺の延長が北極海を横断するように伸びています.したがって,北極ではこの海嶺の活動のために地震が起きます.南極は大陸で,大陸の中にプレートの境界はありませんので,南極大陸の中に地震活動はほとんどありません.ただ,南極半島と呼ばれる南米の方へ伸びた半島は,日本と同じような"弧状列島"です.したがって,ここでは地震活動が見られます.
・地震がいつ来るか分かるのか?地震の発生に周期はあるのか?大地震は,何年くらいの間隔で発生するのか?
分かろうと多くの人が努力しています.大きな地震は繰り返します.海で起きるM8クラスの地震は100-200年,内陸で起きる地震は1000年以上の間隔で繰り返すといわれています.このことを使って,地震の発生予測をする試みもされています.ただ,その間隔に大きなばらつきがあることを覚えておいてください.
・日本では,一日平均でどのくらい地震が起きているのか?
被害が起きるようなM6より大きな地震は,110年間で約1300起きています.1年あたり10以上のM6より大きい地震は起きると考えていいでしょう.体に感じない地震まで数えると,もっともっとたくさん起きています.
・何度も同じプレートの組み合わせで地震が起きるのはなぜか?
プレートの動きは,速いもので1年あたり10cmほどです.プレートは何百kmもの大きなものですから,組み合わせが変わるまで,気の遠くなるような時間がかかります.
・阪神・淡路大震災の時,プレートの運動はどうだったのか?
神戸・淡路島をはさんで東西に縮まり,南北に伸びました.プレートの運動に影響があったかどうかは,よく分かっていません.
・なぜ,フィリピン海プレートや太平洋プレートから遠く離れた神戸で地震が起きたのか?
プレートが日本列島をギューギューと押していて,その力で地殻の弱いところから傷ができます.そのとき,地震が起きます.この力は,日本列島全体にかかっているので,神戸や鳥取などでも地震が起きます.
・明石海峡大橋を作ったから地震が起きた,というのは本当?
たぶん,関係ないと思います.
・マントルの運動を止める方法はあるのか?地震を予知することに加え,防ぐことはできない(起きないようにすることができない?)のか?地震の発生を止められるようなものが発明される?
まず,ありません.そんなことは考えない方が良いでしょう.マントルの運動は,地球が内部にためたものすごい大量の熱を宇宙空間へ放出するためのものです.たとえ,一部を止めたとしても,どこかでその影響を解消するでしょう.また,止めるのにも限度がありますから,限度を超えたときにとんでもない大きな地震が起きるかもしれません.
・プレートの変形の仕方は,地質の違いで分かるのか?それとも,はじめから決まっているのか?
海のプレートと陸のプレートは岩石がやや違うので,変形の仕方も違います.また,海のプレートも年代で違います.
・プレートは,どのくらい深いところにあるのか?プレートの最大規模はどのくらい?最小規模は,どのくらい?
海のプレートで100kmくらいの厚さがあると言われています.一番大きなプレートは太平洋プレートで,さしわたし10000km程度あります.マイクロ・プレートと呼ばれる小さなプレートは100km以下のものもあるとされています.
・一つの地域で断層ができると,周辺も全て隆起・沈降するのか?
断層運動の仕方によって,いろんな隆起・沈降のパターンがあります.
・地震の時,付近の海底はどうなっているのか?
ゆれで地すべりや泥の「なだれ」が起きたりします.また,隆起・沈降が大きいと,そのために津波が発生します.
・液状化現象は,二次災害か?液状化現象は,人工地盤に限らず,自然地盤でも起きるのか?
地震動で引き起こされるので,二次災害とはいえないのでは?自然地盤でも,地下水が多いところでは起きます.
・縦ゆれ(あるいは上下のゆれ)と横ゆれは,どちらが速く,広く伝わるのか?
縦ゆれはP波といって,横ゆれ(S波)より速く伝わります.どんな波がどこまで遠く伝わるかは,地球の中の構造と地震の震源での波の出方によります.
・地球以外の天体にも地震はあるか?
あります.アメリカのアポロ宇宙船が1969年から1972年にかけて,月に置いてきた地震計では,いろんな震動が観測されています."月震"と呼ばれています.
・世界最大のずれの量は,どのくらいか?最大の断層の幅は,どのくらいか?
1回の地震での最大は,人間がその目で観察したものでは1999年9月の台湾の集々地震での10m以上のずれでしょう.計器観測から推定したものでは,1960年のチリ地震のずれ(12m)が最大です.ただし,これはデータが十分ではなかった時代の話.2004年12月26日のスマトラ地震では,局所的には30mを超えるずれがあったと報告されています.断層のスケールは長さで計ります.アメリカのサンアンドレアス断層などは,1000kmを超えています.先のスマトラ地震の断層は1300kmくらいあるようです.
・近畿にある活断層の数
どんなものを活断層とするかによりますが,大地震を起こすと考えられる活断層(帯)は全国で98あるとされていて,そのうち23が近畿地方にあります.
・(トレンチ断面を見て)なぜ断層のところの色が違う?
断層が繰り返しずれるので,岩石が細かく砕け,そこに水が染み込み,化学反応を起こすことによって色が変化します.
・断層とは何か?
地層はふつう水平に積み重なっていますが,ところどころ切れているところがあります.それを断層といいます.
・断層ができた時,断層上に火山があったなら,その火山は噴火するのか?
火山の下にマグマがたくさんあれば,断層の運動によって地上に出やすくることも考えられます.
・地震が発生しない国は,火山が少ないのか?
多くの火山もプレートの境界にできます.したがって,大地震の発生するところにはと火山も多いです.
・富士山が噴火したらどうなるのか?
ふもとでは1m以上火山灰が積もるでしょう.東京でも火山灰が降るので,新幹線や飛行機などは使えなくなり,大混乱になるでしょう.1980年のアメリカのセントへレンズ山や1991年のフィリピンのピナツボ山などは,山の形が変わってしまうような大噴火をしました.今は噴火する様子は見られませんが,そのようなことが富士山でもないとは限りません.このような場合も考えて日ごろから対策を考えておくことが必要です.私達は,そういう国に暮らしているのです.
・ 地震が起きる前に,前震以外の現象はあるのだろうか?
電磁波、ラドンの濃度、大地のひづみ、地下水や温泉の温度、水位などが測定されています。動物行動は迷信とする人もいますが、私はそうは思いません。
・ 実際ナマズを飼って研究をしてますか?
普通の地震学者は動物を研究していませんが、わたし(池谷さん)たちは研究しています。ビデオを見て下さい。
・ どのくらいの種類の動物が3V程度の電圧で反応するのか?
1メートルあたり3ボルトで、1cmあたりなら30mV。多くの敏感な動物は、この10分の1でも体を痙攣させる。カエルの筋肉が電気刺激で痙攣するのと同じことが起こる。「電気受容器」という器官で魚の電気を感じてエサをとるナマズやサメでは、1メートルあたり100万分の5-10ボルトを感じているのです。
・ 一番敏感な動物は何か?そして,その動物は何Vくらいで反応するのか?逆に,一番鈍感な動物は何か?
ナマズやサメの電気を感じる動物は、地震の前にも敏感に反応しています。わたしは、ウナギやワニ(クロコダイル)が0.2-0.3V/mで痙攣していました。空気中ではほぼ30V/m(0.3V/cm)くらい、磁界では100ナノテスラ、電力ではほぼ2W/m2 に対応します。鈍感なのは人間ですかね。子供は地震の前になぜか目覚めてこわがったりする子もいるし、大人も気分が悪くなる敏感な人がいます。一番鈍感なのは、このような前兆を頭から迷信と信じ、気のせいにしてしまう科学者です。研究しないで、そう信じているんだから、そちらの方が迷信ですよね。これを「学者の異常行動、思い込み」といいます。現在、その原因を調査中です。 わたしは、研究すればするほど、動物は電気で騒ぐと確信をもちます。わたしか、信じない科学者のどちらが間違っているか、科学って面白いでしょ。まだまだ、わからないことが多いんですよ。
・ 地震の前の植物の異常が見られるのか?それは電気と関係あるのか?
答えは、イエスです。ただいま研究中です。でも、くり返して実験をしないと科学の論文にならないんです。まだまだわからないことだらけです。だから研究は面白いんです。動物は電気の刺激で興奮物質が出てきて、異常行動を示します。植物も同じです。根は電位の方向にのびます。植物の成長は早くなります。また、稲のような葉がとがっていると、先の部分が枯れます。皆さんも実験できますよ!
・ 電波が発生して,磁針が狂うことはないのか?
地震の前に、北を向いていたコンパス(磁石)の針がまわったといいます。電波は電磁波ともいい。電界と磁界の波です。当然、強い電磁パルスで磁石の針は狂います。水準器には水に空気の泡が入っています。電界でこの泡も動くのですよ。「磁石の針は磁場で動く」、「水準器の泡は傾くから動く」という常識に捕らわれないで下さい。今度きたら、実験で示しましょう。
・ 携帯電話やテレビの電波では,動物は異常行動を起こさないのか?
弱い電波ですので起こしません。ただ、携帯電話の発信出力が大きいものは、使う人の頭の位置で、空気中では3cm-5cmで2-5V/mにもなります。しかし、水の中では0.025-0.125V/mですから、ナマズは携帯電話を受ける強さ3V/mではありません。その位置での電力、あるいは電界が問題なのです。ナマズはこれを感じているはずですが、暴れるほどではないのです。それに、強さによりますが、危険でないとわかったら、慣れてしまいます。
・ 電波は最大どのくらいまで伝わるのか?
どのくらいの弱い電波をどれくらいの大きさのアンテナで検出するかです。また、周囲の妨害する電波(雑音=ノイズ)によります。わずか20Wの出力の発信装置で太陽系の彼方からボエェッジャーは電波を送ってきて、私たちは惑星の映像をみれるのです。この電波は、1m2あたり1兆分の1ワットのさらに1兆分の1です。すなわち、1兆分の10V/mくらい、0.00と0が11個もつづきます。ナマズよりも電子通信工学を使う人類の方が電波には敏感です。
・ 電波が大量に集まって,雷にならないのか? 地震雲はどうしてできるのか?
電波は雷でも発生するのですが、これが集まって干渉しあうと強い電界が縞状にできます。この位置で発光や火の玉ができると考えられます。電界の強い位置には地震雲ができるでしょう。そういった位置に雷雲があると雷になるでしょう。
・ (地震で)ゆれている時は,電波が出るのか?
電波は地震の時にも出ます。ただ、地震の前よりも弱いことが多いようです。観測された例がたくさんあります。
・ 阪神・淡路大震災は,全く予期していなかったのか?
わたしはミミズの穴がたくさん出ていて不思議に思いました。また臭も変に思いましたが、まさか地震のまえぶれとは考えませんでした。地震の前にミミズが騒ぐなんて知らなかったのです。次からは、気をつけようと思っています。地震がそのうち起こりそうだと考えていた人達はいました。でも、だれも信用しなかったのです。直前に気分が悪くなったり、動物がおかしいのを見て、「地震かも...」と思った人はいたのですが、..。
・ コンピューターや震度計以外を用いた地震予知の研究とは,どんなもの?
電磁波、すなわち電波や大地の電圧を計る方法とか,動物や植物の変化に気を配る個人的な予知方法
・ 現在の機械・システムを導入していれば,被害を小さくできたのではないか?
どんな機械・システムを考えているのでしょうか?まだ、地震が来るのを間違いなく言える人はいません。これから、研究していかないといけないのです。
・ 地震がいつ来るか分かるのか?(地震予知:時間、場所、マグニチュード)
・ 気象の変化や動物の異常行動は,地震予知に役に立たないのか?
むずかしい質問ですね。ほとんどの学者は迷信であると思っているでしょうが、私は役立つと思っています。ただ、「地震予知は地震の大きさ(マグニチュード)、起こる時間、場所の3つが判らないといけない」とする人達がいます。そこまで判ればよいのですが、まずは一歩一歩、予測できるところからわからせて被害を減らしていく必要があります。そのためには、研究をしないといけないのです。予知はむずかしい」「できない」と言って何もしなければ、できることもできません。むずかしいから、夢を持って挑戦するのです。やさしければ、とっくの昔に誰かがやっています。将来、皆さんが科学者になって、被害を減らす研究をして下さい。
地震観測・防災(橋本による回答案)
・震度を感知する観測所は,日本に何ヶ所くらいあるのか?近畿地方では,どこにあるのか?
現在,気象庁,自治体などが観測する観測点が2500ヶ所ほどあり,気象庁にデータが送られています.これ以外にも,鉄道,ガス会社,電力,ダム・河川・港湾関係などのお役所が独自の観測をしています.ほとんどすべての市町村に,最低1ヶ所あると思って,間違いありません.
・皇居に震度計を置いているのはなぜか?皇居は,大地震に対して安全なのか?
気象庁の建物の下には,地下鉄が通っています.このため,ノイズが大きいので,ノイズの小さい皇居に置いているそうです.
・最近大地震が起きたからといって,監視する意味があるのだろうか?
大地震には余震や誘発される地震もあります.これらの情報も重要です.それよりまして大事なことは,めったに起きない地震のことをよく調べることによって,次の地震に対する備えをしっかりすることです.そのために,いろんな観測・調査をするわけです.
・東海地震の判定で地震の2,3日前に議論する余裕はあるのか?
実際起きてみないと分かりませんが,大きな地震には2?3日よりもっと前から異常現象が見られるといわれています.
・関東地方で大地震が起きた時の,気象庁の対策はどうなっているのか?観測装置や処理装置が壊れたらどうするのか?
気象庁には東京以外に管区気象台というのがあって,そこがバックアップすることになっています.
・マグニチュードは,どうやって決めるのか?
マグニチュードは,ふつうは地震計の記録のゆれ幅やゆれる時間から決めます.それ以外にも,津波や地殻変動から決めるやり方もあります.
・マグニチュードと震度の関係
マグニチュードは破壊現象としての地震の大きさです.震度は,ある場所での揺れの強さです.数字が近いので,大人でも混乱していますので,注意しましょう.
・Galは,なぜ地震の単位に使われているのか?そもそも,Galはどういう意味か?
Galはあのガリレオの名前からとった,加速度の単位です.地球の重力は980Galです.加速度は力に関係しますので,地震の揺れの強さを表すのに使われています.
・最も大きかった地震は何か?また,最も大きな被害を出した地震は何か?その時の死傷者はどのくらいか?
20世紀最大の地震は,1960年チリ地震(Mw9.5)です.20世紀最大の被害地震は1976年中国の唐山地震で,20万人ほどの人が亡くなりました.今世紀最大かつ最大の被害地震は,もちろん2004年12月26日のスマトラ地震です.
・なぜ,東海地震だけを監視するのか?他の地方の予知も進めないと,被害が大きくなるのではないか?
東海地方は150年間大地震が起きていなくて,それでいて地殻変動が大きいので,大地震が起きる可能性が最も高いと考えられています.しかし,阪神・淡路大震災が発生したので,政府は全国的に東海地方と同じような観測をできるようにしつつあります.
・阪神・淡路大震災は,全く予期していなかったのか?どうして,阪神・淡路大震災の前に新しい機械やシステムを導入しなかったのか?
活断層があるので,注意すべきところと考えられていましたが,一般の人々まで伝わっていませんでした.GPSなど新しい観測システムも導入され始めていましたが,十分ではありませんでした.
・他の先進国でも地震予知の研究は行なわれているのか?
アメリカ,中国,ロシア,ギリシア,イタリアなどで行われていますが,それぞれの国でおかれている重点は違います.
・東海地震を正確に予知できたら,どういった措置をすればよいのか?東海地震の警戒宣言が出たら,対象地域の人々は他の安全な場所に避難しないのか?東海地震では,避難所に危険はないのか?
法律で何をするか決められていて,警戒宣言が出たら新幹線・高速道路などはすべて止められ,学校も休校です.他の地域への移動は困難になるでしょう.避難所は多くは学校でしょうが,100%安全とはいえないでしょう.その耐震性?周囲の工場,原発などの安全性?
・断層の場所を市民に知らせれば,被害を減らせるのではないか?
そういう目的で,政府が最近98の断層を,大地震が起きる可能性のある断層として選び公表しました.現在,大地震が起きる可能性を調べるための調査が進められています.ただ,鳥取県西部地震のように活断層が分かっていないところでも起きることも忘れてはいけません.
・予知できても,建物などへの被害は防げないから,どう対策するのか?予知だけではなく,防災対策にも綿密な計画を立てるべきではないか?
住民の避難誘導や,建物・道路・鉄道・橋などの対策について綿密な計画はすでにあります.自動販売機の転倒対策などというのまでありますよ.これらは,阪神・淡路大震災の後,全面的に見直されました.問題は,それを人々がどう運用するかでしょう.